みなさんこんにちは!
当ブログ「中学受験Books」では、「『本』は中学受験における最大の差別化要因」をテーマに、国・算・理・社の各科目で理解を格段に深め、その結果として周りの受験生と明確に差をつけることのできる1冊を紹介しております。
というわけで、今回のテーマは「社会の歴史分野」です。
具体的には「いかに歴史をストーリーとして捉えるか」です。
歴史をストーリーとして学ぶのは案外難しい。
長年指導をしてきて、社会の歴史分野を学んでいる生徒さんやその親御さんからからよく頂く質問の中でももっとも多いのは、
「歴史はストーリーとして理解しなきゃダメってよく言うけど、そのやり方が分からない。」
というものです。
たしかに、旧石器時代から令和時代まで、受験生からしたらかなり膨大な量の知識がそこにはあって、それら膨大な知識をストーリーとして把握するというのは、なかなか難しく感じるものです。
では、いったいどうしたらいいのでしょう?
歴史におけるストーリーとは何か?
この問いに対して、まずは「そもそも歴史におけるストーリーって何?」ということを理解する必要があります。
「歴史をストーリーとして捉えるのは難しい」と感じている多くの受験生やその親御さんは、「歴史のストーリー」=「歴史の流れ」くらいの粒度で捉えてしまっていることが多く、つまり漠然と流れを把握しようとしている。これがストーリーとして捉えられない原因となっています。
というわけで、まずは「歴史におけるストーリー」の解像度を上げる必要があります。
そのために、具体例を通して「歴史におけるストーリー」を見てみましょう。
例えば「鎖国」で見てみると、
- 1550年に平戸にポルトガル船が来航し、貿易が始まる。
- 貿易船に乗って宣教師が来日し、キリスト教が日本に伝わる。
- 江戸幕府は、キリスト教の教えが幕府の身分制度に反するため、キリスト教を問題視する。
- 1624年にスペイン船の来航を禁止する。
- 1639年にポルトガル船の来航を禁止する。=鎖国の完成
という流れによって鎖国が完成しています。ただこれを「単なる流れ」として捉えるのでは不十分です。
この5つを詳しく分析的に見ると、
- ④・⑤という史実が起こったのは、③という原因があったからであり、
- ③という史実が起こったのは、②という原因があったからであり、
- ②という史実が起こったのは、①という原因があったからです。
このように、歴史におけるストーリーとは、「歴史的なファクト(史実)」と「その原因・理由」という因果関係が蓄積してできあがったものということです。
つまり、歴史をストーリーとして把握したいなら、史実とその原因の1つ1つを明確に理解し、その理解を積み重ねていくことがとても重要なわけです。
(逆に言えば、歴史をストーリーとして把握できていない理由は、「史実とその原因」の蓄積をできていないからだと言えます。)
「史実」と「原因」の因果関係を効率よく学ぶには。
では、どうやって歴史における「歴史的なファクト(史実)」と「その原因・理由」という因果関係を学べばいいのでしょう?
旧石器時代からコツコツ学んでいくしかない、と思う方も多いでしょう。ただ、それだと因果関係が見えにくく、結果として一通り歴史を学んだはずなのにストーリーとして把握できていないという状況に陥りやすい。(これは多くの受験生が塾で旧石器時代から一通り学んだはずなのにストーリーとしてほぼ捉えられていないことからも分かるでしょう。)
そこで、因果関係を明確にして歴史をストーリーとして把握するための学び方として「逆から学ぶ」というスタンスが非常に効果的です。
先ほどの「鎖国」の例で言えば、
- 日本は鎖国をしたんだよ。
↓なんで鎖国したの? - キリスト教の教えが江戸幕府の身分制度と反していたから、江戸幕府が問題視したからだよ。
↓なんでキリスト教は日本に伝来したの? - 宣教師たちが日本に来たからだよ。
↓なんで宣教師が日本に来たの? - 1550年に平戸にポルトガル船が来て貿易が始まって、その貿易船に乗ることができたからだよ。
こんなふうに、逆から学ぶことで「因果関係」が明示化され、歴史をストーリーとして把握しやすくなるわけです。
歴史を「逆から学ぶ」ためにオススメな書籍
では、この「逆から学ぶ」をいかにすすめていくか?
この「逆から学ぶ」という作業は、指導している生徒さんと参考書や問題集を使いながらかつてはよくやっていたんですが、これがなかなか骨の折れる作業でした。
でも、2017年にこの作業を簡略化してくれる書籍ができ、とても重宝しています。それがこちら↓
『日本史は逆から学べ』(河合敦・光文社知恵の森文庫)
「日本史は逆から学べ」
(光文社知恵の森文庫)
こちらの書籍では、
- 「日本はなんで経済大国になれた?」→「アメリカが戦後日本の経済成長を後押ししたから」
- では、「アメリカはなぜ戦後日本の経済成長を後押しした?」→「冷戦において日本を西側の防壁にしたかったから」
といった流れで、近現代(平成時代)から古代(旧石器時代)へと遡りながら、「史実」と「その原因」の因果関係が1つずつ書かれています。
内容として日本の歴史の全範囲を網羅する内容になっているので、まずはこの書籍から読むのがオススメです。
「日本史は逆から学べ – 近現代史集中講義」(河合敦・光文社知恵の森文庫)
「日本史は逆から学べ(近現代史集中講義)」
(光文社知恵の森文庫)
2冊目は、1冊目の続編です。
1冊目のなかでも、近現代史に絞ってより深掘りした内容になっているので、1冊目を読んだ後に2冊目を読む、もしくは1冊目で項目を1つ読むごとに、その項目に該当している2冊目の項目を読む、といった形で深掘りしていくのがオススメです。
「日本史は逆から学べ – 江戸・戦国編」(河合敦・光文社知恵の森文庫)
「日本史は逆から学べ – 江戸・戦国編」
(光文社知恵の森文庫)
こちらも1冊目の続編の3冊目です。
2冊目と同様な使い方がオススメです。
「逆から学ぶこと」は記述対策に大きく貢献する。
と、ここまで「史実」と「その原因」という因果関係に着目して学ぶことが歴史のストーリーを学ぶ上でオススメで書いてきましたが、実はこの因果関係に着目した学び方は他にも大きな効果を発揮します。
それが「記述問題対策」です。
というのも、中学受験の記述問題の多くは「史実に対する原因・理由を問う問題」だからです。
よく受験直前期に記述問題対策でバタバタする受験生が多いですが、歴史を学ぶ際に上記の方法で行えば、歴史をストーリーとして学べるだけでなく、同時に記述問題の対策までできるわけです。直前期の時間節約にもつながり、別の科目に時間を回せるというメリットにも繋がります。
というわけで、有用性を感じることができたら、ぜひぜひ上記の書籍を活用してみましょう。
ではでは、今回はこのあたりで。
また次回、お会いいたしましょう!